DVと離婚について

家庭内のDV(ドメスティックバイオレンス)は、どんなに平和な世の中になったといってもなくなることはありません。また夫婦間だけでなく、子供にまで被害が及ぶこともあります。

 

とくに新型コロナウィルスにより、度重なる自粛生活とストレスから相談窓口などに連絡のある被害件数はかなり増えているといいます。

しかし、実際にはその何倍もの人が配偶者・親族・ときには子供からのDVなどに苦しんでいるのでしょう。

この記事を読んでいるあなたが、今現在相手からのDV被害に悩んでいるのであれば、まずは自分の身の安全を確保することが最優先です。

早い段階で別居をしてください。

 

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1:DV被害は第三者に頼ること

 

最初にいっておきますが、DVはまず1人で解決することはできません。必ず第三者に助けを求めましょう。自分だけが我慢すれば、丸く収まるという気持ちでは、DV加害者の行動がエスカレートしていきます。

また、頼る相手についても考慮が必要です。実家の両親などが理解のある場合はいいですが、必ず被害者側のあなたの意見を素直に聞いてくれるとは限りません。一昔前の考えで「女は夫の所有物だから我慢しておけばいい」というような見解の人であれば、よりあなたが窮地に立たされてしまうこともあります。

場合によっては、身内だけでなく専門機関などに相談することも視野においてください。

2020年4月より、スタートした深刻化しているDV被害を懸念して作られた相談事業です。フリーダイヤル電話や、メール、チャットなど24時間対応で相談できます。

このほか、住まいの市町村ごとにも相談窓口が開設されています。あなたは1人ではないということ知っておいてください。

 

2:DVにより離婚をしたい場合

 

配偶者からDVを受けていることを理由に離婚を申し立てても、絶対に離婚が認められるとは限りません。DVをされている証拠が必要です。

離婚を考えたら、まずは証拠集めを始めてください。

  • 日常的な暴力を証明できるもの(写真・音声録音・メモ)
  • ケガなどがあった場合は診断書

などです。肉体的な暴力だけに限らず、精神的な暴力(モラルハラスメント)、経済的暴力、性的暴力なども「婚姻関係を継続し難い重大な事由」として認められる場合もあります。

DV離婚は証拠が多ければ多いほど、有利です。どんなに細かいことでも物証として集めるようにしてください。

 

3:調停と訴訟

 

DVの証拠を集めたら、離婚調停の申立てをします。DVの場合は、普通の離婚調停とは異なり、身の安全を確保するために配慮をしてもらえます。

相手と鉢合わせしたりしないようにしてもらえるので、安心してください。また、この際にはできれば弁護士に依頼をしましょう。DV加害者は、弁護士をつけるかつけないかでも、かなり出方が変わることもあります。

経済的に余裕がないという人も、法テラスなどを利用すれば、無料相談や弁護士費用立替などの措置があります。

 

家庭裁判所による調停で、相手が離婚に応じない場合は、最終的に離婚訴訟を提起することになります。DVの場合は離婚と、慰謝料の請求についても認められることが多いので、のちに慰謝料がきちんと払われなかったとしても、差し押さえをすることができるようになります。

 

4:最後に

 

DVを受けている人は、まずは身の安全の確保を最優先してください。経済的にも不自由で、身内に頼ることができないという人も、諦めずに専門の相談センターなどに連絡をしましょう。

 

あなたの身の安全の確保や、手助けをしてくれるはずです。その上で、弁護士などの専門家に相談をして、離婚の手続きを進めることをおすすめします。DVはあなただけが我慢すればいいという問題ではありません。必ずエスカレートし、悲しい事件に発展してしまったり、身心ともに深い傷を残すことになってしまいます。

DVに苦しんでいる人は、一刻も早くその生活から抜け出す行動をして欲しいと願います。

元夫が転職・転居などで所在不明により養育費の支払いが滞りだした場合の手続き

離婚時には「養育費」を離れて生活していく子供のために、支払い続けると言っていた元夫。しかし、最初のうちしか養育費がまともに払われず、気がつけばすっかり滞ってしまったりすることは、離婚後のトラブルとして非常によくあります。

このように離婚の際に調停調書や、公生文書などに「養育費の取り決め」について記載をしていたとしても、その約束が必ず履行されるとは限りません。

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通常であれば、強制執行などの手続きをすることで預貯金銀行口座から、もしくは給与から強制執行で養育費を受け取れるようにすることができます。簡単に、諦める必要はありません。

 

先日紹介した記事も参考にしてみてください。

「リンク:「よくあるご質問 養育費が払われないときの手続き」」

 

ただし、連絡が取れなくなったり、元夫が転職などで元の会社を辞めてしまっていたり、転居などにより所在すらわからなくなってしまったという場合、泣き寝入りしてしまう人も多いでしょう。

 

1:従来の方法で「作り出された逃げるが勝ち」の現状

従来の法律では、元夫が転職したり転居などで所在がわからなくなってしまった場合、自分で相手の新しい職場や、預貯金のある金融機関名や支店などを調べる必要がありました。

連絡先や所在まで不明になってしまっている元夫を相手に、ここまでの情報を入手することは、素人にはなかなか難しいでしょう。結局はやりようがないので、諦めてしまうことになり「養育費は逃げたもの勝ち」の現状を作り出してしまっていました。

 

2:法改正により養育費の取り立てが楽になった

2020年に行われた法改正により、この未来を担う子供達を貧困から救うべく養育費不払いへの対策が進められています。

これにより、裁判所を通じて市区町村や銀行に「第三者からの情報取得手続き」ができるようになりました。

これは、養育費の取り決めをした時期が、法改正以前であっても適応されます。ただし、調停証書や公正文書、また和解調書や裁判離婚時の判決書などが無い場合は、手続きができません。

しかし方法はあります。

 

3:離婚時に正式な取り決めをしていなくても大丈夫

もし、離婚時に養育費の取り決めを正式にしていなかった場合は、今からでもいいので養育費の請求をおすすめします。(口頭約束だった場合など)

原則は、養育費を請求してからの時期の分の支払い義務となるので、過去にさかのぼって請求するということは、ほとんど認められていません。さらにここから先、子供が大きくなればなるほどお金は必要になります。

後になればなるほど、請求できるお金も少なくなるので早めの段階で、弁護士に相談することをおすすめします。

 

4:所在不明の場合も弁護士に相談を

転職・転居によって相手の所在が不明の場合は、まずは弁護士に相談してください。弁護士に依頼し、相手の住民票などを調査することによって所在を確認することができれば、再度強制執行手続きをし直すことができます。

この手続きをすることで、相手にも「払い逃げ」ができないことを知らせることができます。再度、払い逃げすることに対しての抑止力にもなることも期待できます。

 

5:最後に

離婚は、夫婦の間だけの問題ではありません。もし、子供がいる場合には、その子供の心身的な健康についても、しっかり考えて行く必要があります。

早く離婚をしたい気持ちが焦って、養育費の取り決めをうやむやにしてしまったり、「いらない」と言ってしまうケースも多いようですが、もう一度考えてみてください。養育費は夫婦間でどうこうするお金ではなく、子供のために本当に必要なお金です。

また、今回のように払い逃げされてしまったりしても、簡単に諦めてしまわないで欲しいと思います。もちろん、ただでさえ子育てや仕事などで時間のない監護者となる親には大変な手間になるとは思います。しかし、お金はいくらあっても困ることはありませんよね。そして、養育費はあくまで子供のために必要なお金です。1人で抱え込まずに、なるべく早い段階で弁護士に相談してみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よくあるご質問 養育費が払われないときの手続き

離婚時に取り決めをしたはずの養育費を、きちんともらえている家庭は少ないのです。もちろん離婚はしてもお子様のために、ちんと支払いをしている人もいます。しかし、その数は日本の片親家庭のうち2割程度です。実際には、8割の家庭が養育費未払いの状況に苦しんでいます。

養育費はお子様の成長にとって、非常に重要なものです。今回は「養育費の未払い」の際にすべき手続きについてお話していきます。

 

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 1:養育費の支払い義務

養育費は、親権を持たない親が子どもの養育をする方の親に、必ず支払う義務があります。しかし、実際には最初だけ支払いはあっても徐々に支払いが滞り、しまいには音信不通になってしまうケースが非常に多いのです。

公正証書など、書面でしっかり取り決めをしたとしても、払い逃げをされてしまうパターンもあります。

 

2:養育費の取り立て方法

とくに相手側の借金問題などで離婚をした場合、「どうせ相手には支払い能力がないだろう」または「言っても払ってもらえないだろう」と養育費の未払いをそのまま諦めてしまう人が多いようです。

しかし、もう一度考えてみてください。養育費はご自身のために請求する金銭ではありません。お子様の健やかな成長のために必要なものです。その事実をしっかりと受け止めて、以下の手続きをしてください。

 

3:養育費未払いの場合の手続き

相手から養育費の支払いが滞ったり、未払いになってしまった場合は次の方法で手続きを進めていきます。

①内容証明で相手へ催促をする

まず最初にすることは、相手に養育費の催促をすることです。電話やメール、LINEでの催促をして、それで支払いをしてくれるようであれば問題ありませんが、その際も通話やメール、LINEでのやりとりを記録として残しておきましょう。(録音・メモ・スクショなど)

しかし、それでも支払いをしてくれる様子がなければ内容証明を使って書面で催促をします。内容証明は郵便局で手続きできます。相手に支払いの意思があればこの時点で支払いをしてくれるはずです。

 

②家庭裁判所で調停調書などを作成済みの場合

離婚時に家庭裁判所で養育費の取り決めなどをしている場合は、家庭裁判所に対しての以下の3つの申し出をすることができます。

「履行勧告」

履行勧告は無料で行うことができます。これにより、家庭裁判所から相手側へ勧告をしてもらうことができます。(しかし、これは強制ではなくあくまでも勧告です。相手が従わない場合は意味がありません)

「履行命令」

それでも支払いがされない場合は、正当な理由なく支払いを拒否する場合10万円以下の過料を請求する「履行命令」を申し出ることもできます。(ただし、これも強制的な養育費未払いの取り立てができる効力はありません)

「強制執行」

給与や銀行口座の差し押さえなどを強制的に執行できます。相手が支払いに応じなくても雇用先や、銀行から直接支払いをしてもらうこともできます。

 

どの方法を行うかは、相手や、離婚時の状況、現在の状況によって異なります。とくに強制執行をする場合は、できれば専門家の意見をもとに動くほうが良いでしょう。離婚問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

また、離婚時にお世話になった弁護士がいる場合は、引き続き相談してみるとスムーズです。

 

③公正証書を作成済みの場合

家庭裁判所などでの調停はしていないけれど、公正証書に離婚の際に養育の取り決めをして書面に残しているのであれば、公正証書を使って強制執行の手続きをすることができます。

公正証書に「債権者は,債務者に対し,この公正証書によって強制執行をすることができる。」という1文があれば、問題ありません。家庭裁判所の窓口で強制執行の手続きをしてもらうことができます。

 

④当事者同士の口約束や、個人的な書面での取り決めの場合

口約束や、自分達で作成した書面での取り決めだけでは、公的な証明にはなりません。ただし、この時点でも家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立てれば調停調書の作成をしてもらうことができます。

時間はかかりますが、②で紹介した「家庭裁判所で調停調書などを作成済みの場合」の方法で相手に養育費を取り立てることができます。

 

3:養育費を泣き寝入りする必要はありません

養育費はお子様のこれからの成長にむけて必ず必要な金銭です。トラブルを避けるために、泣き寝入りしてしまう人も多いですが、諦める必要はありません。日本の養育費未払いの現状を改善すべく、民事執行法改正も行われ元配偶者の銀行や勤務先、住所などを調べやすくなりました。

公正証書や、調停調書などを作成せずに離婚してしまった人も、この機会に養育費をきちんと請求することがきます。

場合によっては、弁護士などの専門家に相談をして、きちんと受け取るべきものを受け取ることができるように動いてみることも考えてみてはいかがでしょうか。

よくあるご相談「面会交流」をさせたくない

「養育費をもらっているから、元夫(妻)に子どもを合わせなくてはいけないんですよね」そんな質問をされることが増えました。この質問の答えについて、今回はお話していこうと思います。

面会交流は原則実施です。しかし、勘違いされる方が非常に多いのですが、面会交流は「養育費の支払いがあれば、親同士がお子様とお子様を引き取らなかった親を合わせること」を、義務としているものではありません。

原則は実施でも、事情や状況によっては実施する必要がないとされる場合もあります。以下でわかりやすく解説していきます。

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1:面会交流とは

そもそも面会交流とは、子どもと別居して生活している父母の片方が、子どもと定期的、かつ継続的に子どもと以下のような時間をもつことをいいます。

  • 会って話をする
  • 一緒に遊ぶ
  • 電話で会話をする
  • 手紙などのやりとりをする

そして、面会交流は子どものためのものであり、決して親の権利ではありません。そのため、面会交流の取り決めをする際には、子どもの気持ちを尊重する必要があります。また、生活リズムやスケジュールも、子どもに合わせて決めていきます。

 

2:なぜ面会交流をする必要があるのか

夫婦間の関係が悪化して、結婚生活が破綻してしまうことはあります。お互いにこれ以上顔を合せることで、精神的苦痛などの負担が生じる場合もあります。しかし、子どもにとっては人格形成のためには、両親からの愛情や、信頼関係を構築し続けることは大切です。

そのため子どもにとって、面会交流がメリットになる場合は、面会交流は必要であると判断されるのです。

 

3:面会交流の原則実施の例外(面会交流をする必要がない場合)

もし、面会交流をさせたくない(=制限したい)と考えるのであれは、以下で説明する制限の対象となる5つの要素に当てはまる場合は、面系交流を制限できる可能性が高くなります。

  1. 子ども自身が会いたがらない場合や年齢・心身面での影響・生活環境に及ぼす影響に問題が生じるとき
  2. 監護親の意思・養育への影響・生活状況など
  3. 非監護親の生活状況・問題がある場合
  4. 子どもと非監護親の関係
  5. 監護親と非監護親との関係に関する要素

(※監護親=子どもを引き取った親、非監護親=子どもと別居しているほうの親)

面会交流は子どもの権利であるとともに、子どもを守るためのものです。面会交流によって子どもが心身ともに不利益を被るような状況であれば、制限できる可能性が高くなります。

例えば相手側からの精神的・身体的な暴力などの被害を受ける恐れがある際は、面会交流が子どもの最善の利益に反するものとなります。また子どもへの直接的な暴力はなくとも、配偶者への暴力を振るうことも子どもへの虐待とされます。

このような場合は、具体的に問題点を主張することで面会交流をすべて制限できるケースが多くなります。

面会交流を制限したいのであれば、上記した5つの要素をきちんと主張することが大切です。「別れた配偶者に子どもを会わせたくない」という心情のみでの主張は認められません。

離婚後も面会交流を制限したいのであれば、親同士できちんと取り決めをしておく必要があります。

 

4:面会交流の取り決め

面会交流については、離婚時にしっかり親同士で話し合うことが大切です。養育費などの話合いと一緒に面会交流の頻度や方法などを決めて、書面に残しておく必要があります。以下の、「子どもの養育についての取り決めの合意書」のひな形をダウンロードして活用してもいいでしょう。(法務省の作成したひな形)

子どもの養育に関する合意書

ただし、相手が素直に面会交流の話合いに応じてくれない場合や、話合いに決着がつかないような場合は、家庭裁判所の家事調停手続きを利用することをおすすめします。

公正な立場の第三者の力を借りることは有効です。家庭裁判所にて、家事審判手続きをすることで裁判にて結論がでます。また、相手が取り決め事項を守らない場合は、強制執行の手続きをすることができます。

もし、ご自身ですべての手続きをこなすのが難しいようでしたら、離婚問題を得意とする弁護士に相談してみると良いでしょう。

 

5:最後に

離婚問題は非常に複雑です。とくにお子様のことが絡めば、より感情的になってしまう方も多くいます。しかし、面会交流の持つ意味をしっかり考え、お子様の健全な心身の成長によりよい状況を作り出すことを優先させることも親の責任です。

さまざまな状況をお抱えのなか、みなさまがよりよい選択をしていただけることをお祈りいたしております。

 

 

 

 

海外の離婚事情

日本では離婚する夫婦の数が増えつつあり、3組に1組は離婚していると言われています。 一方、世界に目を向けると、どのような離婚事情になっているのでしょうか。
婚姻は各国の国内法による制度であり、その国の歴史や宗教観も影響するので、離婚のしやすさや制度、条件などは国によって違います。
この記事では、気になる海外の離婚事情や制度についてご説明します。

 

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1. 宗教による各国の離婚制度の特徴
欧米諸国ではカトリックを国教としている国も多いですが、カトリックは生涯1人の伴侶と添い遂げることをよしとした教えでもあり、離婚については厳格な要件を求めている国も多いです。

例えば、カトリックの国フランスでは、正式な婚姻関係を結んだ夫婦が離婚する場合、日本での離婚に比べて様々な手続きが求められ、それほど簡単には離婚が認められません。
ただ、フランスには事実婚制度に該当するパックス制度があります。パックス制度は同性・異性カップルどちらもが利用可能な制度であり、結婚と同様のパートナー間の相続や税金待遇が認められています。そして、結婚と異なり、どちらかの意思表示のみで簡単に解消できるので、より手軽なパックス制度を利用する人も多いようです。

一方、イギリスは比較的離婚しやすく、婚姻後1年間は離婚できないという制限はあるものの、夫婦の半数が、結婚後10年以内に離婚しているようです。これには、歴史的、宗教的な背景もあります。エリザベス一世の父、ヘンリー八世は、新しい妃と結婚したいがためにエリザベス女王の母と離婚しようとしたところ、当時の国教であるカトリックのローマ法王から離婚が認められませんでした。そこで、ヘンリー8世はわざわざ離婚を許容する英国国教会という宗派をイギリスの国教とし、現在のイギリスでも国教として存続しています。 このような経緯から、他のヨーロッパの国に比べると離婚に抵抗がない国民も多いようです。

2. 配偶者の有責性をあまり問題としない国もある
日本の離婚は、有責主義を基調としているといわれています。民法で定められた法定離婚原因5つに該当しない限り、相手の同意なく離婚することはできません。また、法定離婚原因を作った側の配偶者は有責配偶者として、有責配偶者側から離婚を求める裁判をすることはできません。法定離婚原因の中の不貞行為等は民法上の不法行為にも該当しますので、慰謝料請求原因ともなります。

ところが、諸外国によっては、離婚にあたって配偶者の有責性を日本のようには評価しない国もあります。

たとえば、アメリカでは「無責離婚法」という法律があります。不倫や虐待など有責事由がなくても、どちらか一方が希望すればそれだけで離婚可能とする法律です。このような制度もあり、アメリカもイギリスと同様、世界的に見ても特に離婚率が高い国で、2組に1組のカップルが離婚しているといわれています。
この考え方は、有責主義に対して破綻主義ともいわれています。どちらかに有責事由がなくても、夫婦関係が既に破綻している(どちらかが結婚の継続を希望していない)のであれば、結婚を継続させる意味がないという考えの現れと言えます。

アメリカ人もカトリックを信仰する人が多く、離婚に抵抗がない人ばかりではありませんが、上記のような法律や婚姻自体を無効とする宣言をすることが認められているなど、比較的離婚をしやすい制度の国といえます。

また、カナダでは有責事由による慰謝料という考え方はないため、日本の様に不倫慰謝料等を請求することはできないようです。

 

3.最後に

いかがでしたでしょうか。日本の離婚事情とはまた一味違う、海外諸国の離婚事情についてご参考になれば幸いです。

離婚と子供の姓

このブログの別の記事でも書かせていただきましたが、離婚に際しては子供の姓をどうするか検討する必要があります。離婚の相談をいただくとき、子供の苗字は変えたほうがよいのかどうかというご質問をよくいただきます。基本的には、親権者となったほうの親が子供の状況をみて最適と思うほうを選択すればよく正解はありませんが、この記事では子供の苗字を変えるべきか否か悩まれた際の考え方の一例をお伝えします。

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 1.離婚と苗字の基礎知識

日本では夫婦別姓は認められていないので婚姻すると夫婦どちらかの姓(多くの場合は夫側の姓)を名乗ることになり、夫婦間に生まれた子供の姓もその姓となります。離婚時には、妻は旧姓に戻るか婚姻時の苗字をそのまま名乗るかを選択することができます。婚姻時の苗字をそのまま名乗る場合、子供の苗字を変えなくても、親権者と子供の苗字は同じになるのであまり問題は発生しません。

しかしながら、離婚理由によっては、自分が別れた相手の苗字を名乗り続けたり、子供に名乗らせたりすることに抵抗があることもあるでしょう。そのような方は旧姓に戻されることになりますが、母親が旧姓に戻しただけでは、自動的に子供の苗字が母親と同じになるわけではありません。子供の苗字を母親の苗字に揃えるためには、裁判所に対して、子の氏の変更申立てをする必要があります。

子の氏の変更申立てをせず、親権者である母と子供の苗字を別としておくという選択肢もありえますが、生活するうえで支障がでたり、心理的にも違和感があったりすることが多いので、母親が旧姓に戻る場合は、子の氏の変更を選択される方が多いようです。

それでは、自分や子供の苗字を変えるべきか悩んだ場合はどうすればよいでしょうか。

 

  1. 再婚の予定がある場合は、苗字を変えるのを待つという選択肢もある

母がまだ若いなど近い将来再婚の可能性が高い場合、再婚により再婚相手の苗字になる可能性があることを考慮する必要があります。離婚時に母の旧姓に苗字を変更し、再婚時に再婚相手の苗字に変更するとなると、何度も苗字を変えなくてはいけないことになり、子供の負担が大きくなるからです。このような場合は、一旦婚氏続称し、再婚時に1回のみ苗字が変わるようにするという考え方もひとつです。

 

3.子供の年齢や本人の意思

離婚時に子供がある程度の年齢にさしかかっていて、長年使ってきた苗字に愛着を持っていたり、変えることを嫌がったりする場合は、婚姻時の苗字を使い続けたほうがよいかもしれません。子供が別居親にも愛着が強い場合は、断絶された感覚にならないよう、婚姻時の苗字を使いたいという気持ちもあるかもしれません。逆に離婚時に乳幼児などでまだ苗字についてよく理解していなかったり、特に愛着がなかったりするようであれば、苗字を変えてしまってもいいでしょう。

 

また、タイミングとして子供の学校の学期途中などで苗字を変えると、学校の先生や友達に理由を聞かれたり、両親の離婚を知られたりして、子供が嫌な思いをする可能性もあります。可能であれば、進級や引っ越しのタイミング等、子供の苗字が変わったことが気づかれにくいタイミングにして、子供に負担がないように配慮をしてあげたいところです。

 

学期途中での離婚で苗字を変更する場合は、子供に元の苗字を通称名として使わせて良いか学校に相談してみることも一案です。多くの学校では、こうした場合での旧姓での通称名の使用を許可してくれているようです。卒業証書などの公式な書類には戸籍上の本名が使われますが、日常の学校生活では、通称名で問題なく過ごすということも可能です。

 

  1. 最後に

いかがでしたでしょうか。離婚に際して、自分や子供の苗字を変えるべきか否かの検討に少しでもご参考になれば幸いです。

モラハラと離婚について

いわゆるモラハラ、モラルハラスメントによる離婚は近年増えています。モラハラとはいったいどのような状態をいい、モラハラが認定された場合どのような対応がとれるのでしょうか。この記事では、モラハラと離婚についてご説明します。

 モラハラ夫の特徴まとめ26個と対処方法!弱点・復讐・仕返しと離婚方法 | Spicomi

 

1, モラハラとは?

モラハラとは、モラルハラスメントの略称をいいます。ドメスティックバイオレンスの一種ですが、殴る蹴るなど肉体的な暴行ではなく、暴言や無視などにより相手に精神的な虐待をすることをいいます。結婚生活は長期にわたりますし、仲が近い分、夫も妻もモラハラの潜在的な加害者にも被害者にもなりえるといえます。

精神的な虐待になるか否かは、当事者間の人間関係や被害者の価値観や性格にもよって異なるので判定が難しいこともありますが、例えば性格や能力、容姿をけなすような発言、自分の指示に盲目的に従うような強制、実家や友人関係を断絶するような要請等、一方的なコミュニケーション拒絶などの事態があって、被害者の方が苦痛に感じている場合は、一度モラハラに該当するのではないかという可能性を考えてみてもよいでしょう。

家庭内のモラハラはクローズな空間であることや、他人に打ち明けづらいということから、被害者がぎりぎりまで我慢してしまうという事態も多発しています。不安に思ったりストレスがたまったりしている場合は、迷わず専門家に相談しましょう。

 

2.モラハラ被害にあった場合の解決方法

まずは、専門機関に相談してみましょう。すぐに離婚を希望している場合でないとき、緊急性が低い場合は市町村など自治体に設置されている男女共同参画センターの女性相談窓口や、民間で信頼できる夫婦関係調整カウンセラー等に状況を相談してみるのがよいでしょう。第三者を入れての夫婦間のコミュニケーションによってはじめて、モラハラの加害者である配偶者が、自分がモラハラをしているという可能性を自覚するということもあります。モラハラは、加害者自身が、自分の幼少期の両親の関係や親から直接受けてきたモラハラに悪影響を受けて知らず知らずやってしまうことも傾向的に多いと言われています。

 

話し合いや第三者の介入によってもモラハラが解決せず、離婚による解決を模索する場合は、まずはモラハラの客観的な証拠を集めるようにしましょう。家庭内というクローズな環境でのモラハラは人目に触れにくいので、調停や裁判になったときに第三者に客観的なモラハラの事実を証明する証拠を取ることが必要です。

 

一概にはいえませんが、モラハラ加害者は被害者を束縛したいという気持ちが強いことも多いですので、被害者がモラハラによる離婚を求めても離婚に合意しないケースが多いようです。日本の法律では、離婚は民法第770条第1項上の法定離婚事由が認められない限り、相手が同意しないと離婚をすることができません。

モラハラは行為の程度や内容によっては、上述する法定離婚事由の中の「悪意の遺棄」や「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することがありますので、離婚したい場合はこの事由に匹敵するほどの被害があることを証明する必要があるのです。

 

モラハラの存在の証拠集めとしては、モラハラがいつどこでどのようになされたのかを具体的に示せるものを探す必要があります。例えば、モラハラが行われている際の音声データや動画データをスマホやICレコーダーで記録したり、メールやSNSの記録を取っておいたりする手段があります。また、最中の記録がなかなかとれなくても、継続的に日記をつけたり行政や警察、病院との相談記録を取っておいたりすることも有効です。

 

3.最後に

モラハラを立証することができれば、相手の同意がなくても裁判離婚ができたり、また場合によって精神的苦痛に対する慰謝料請求もできたりします。モラハラに苦しまれている方は、是非一度専門家に相談してみましょう。

養育費はあとから変更されることがある?

養育費は、子供と離れて暮らす親がその子の扶養のために、養育している側の親に支払うお金です。養育費は通常離婚時に決められ、毎月一定額を子供が成人等するまで支払われるものです。

子供が小さいときに離婚している場合などは、養育費の支払いは長期にわたります。支払期間中に義務者側も権利者側も、転職、再婚など生活面において様々な変化があることも多いです。そのため、離婚の際に養育費について取り決めをしたとしても、支払期間中の事情の変更によっては、養育費の減額や免除、増額がなされることがあります。

この記事では、養育費が離婚後に変更になる場合についてご説明します。

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1.養育費の変更

 上述のように、養育費の支払い期間は通常長期間にわたりますので、当初とりきめた養育費の額が、その後の家族の身分関係や、両親の経済状況の変化によっては妥当ではなくなることがあります。そのため、民法766条3項では、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、以前の取り決めを変更することができると規定しています。養育費が変動になる典型的な例は、支払義務者側に大幅な経済状況の変化(転職、失業などによる収入の増加や減少や、権利者が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合などがあります。

 

2.養育費変更の具体的な手続き

養育費については、当初取り決められた金額が生活の実体に合わなくなってきたとどちらかの当事者が感じたら、まず養育費の減額や免除、あるいは増額を求めて、相手方に話し合いを求めるという流れになります。

当事者間の話し合いで、変更について納得が得られれればそのとおり変更となります。養育費の変更の取り決めを当事者間で協議で決める場合は、公正証書にしておくことがおすすめです。

協議で決まればスムーズですが、やはり通常は義務者側はなるべく支払いを押さえたいと考えますし、権利者側はなるべく多くもらいたいと考えます。

そこで、折り合いがつかない場合は、金額の変更を求める側が調停を起こし、調停手続きの中で、調停あるいは審判で、変更の是非や変更後の金額を決めていくということになります。

 

 3.再婚と養育費の変更

養育費が変更になる要因の一つとして、義務者あるいは権利者の再婚がありますが、ケースにより変更になる場合とならない場合があります。まず、養育費を受け取っている義務者のほうが再婚した場合は、義務者が再婚した相手と子供が養子縁組をし、新たな配偶者に収入がある場合は、養育費の減免が認められる可能性があります。

養子縁組をすると、養親と養子の間には、実の親子同様扶養義務が発生します。普通養子縁組では、養子縁組をしても実親である義務者との親子関係がきれるわけではないのですが、養親がいる以上、養親は非養育親である義務者より第一義的な扶養義務を負うことになるからです。一方、再婚相手が子供と養子縁組をしていなければ、一緒に暮らしていたとしても法的には親子ではありませんので、養育費には影響がありません。

 

 

では、養育費を支払っている義務者のほうが再婚した場合はどうなるでしょうか。

この場合も、ケースバイケースですが、減額が認められることがあります。

再婚相手は配偶者になりますので、例えば再婚相手が専業主婦などで収入がなければ、義務者の扶養家族となります。また、再婚相手との間に新たに子供が生まれたり、再婚相手の連れ子を養子にした場合、その子供達にも扶養義務が発生します。このように扶養義務を負う相手が増えたことによって、養育費の減額が認められる可能性があるのです。

4.最後に

いかがでしたでしょうか。養育費の取り決めが離婚後に変更になる場合について、ご参考になれば幸いです。