離婚問題でご相談いただく皆様が最も悩む問題の一つに、愛するお子様についての諸問題があります。親権や養育費についてのご相談はもちろんですが、離婚に際してお子様の苗字や戸籍をどうするかは、個人のアイデンティティに関わる問題であるだけに、皆さま少なからず迷われるようです。この記事では、離婚に際する子供の苗字や戸籍について知っておきたい知識をまとめました。
1.結婚に伴う氏や戸籍の変更
日本の民法は、夫婦は同じ姓を名乗ることを義務付けており、多くの夫婦は結婚時に夫の姓を名乗ることを選択しています。また、妻は婚姻に際して、実家の父親の戸籍から抜けて夫の戸籍に入ります。そして、夫婦の間に生まれた子供は、通常父親の戸籍に入ることとなります。
2.離婚に伴う妻の氏や戸籍の変更
離婚すると、妻は夫婦同姓を目的として夫の姓を名乗る必要はないので、妻は旧姓にもどっても結婚後の姓をそのまま名乗ってもどちらでも問題ありません。
生まれたときの実家の姓を名乗りたい人も、夫の姓で社会生活を営み、銀行口座やパスポートなど公的書類、印鑑を作っている等の事情からあえて姓を変えたくない人もいるでしょう。妻は離婚時から一定期間にどちらを選択するかを決めることができます。姓に関しては、離婚届を提出する際(最大提出後3か月)、旧姓に戻るかどうかを選択することができます。
戸籍についても、妻は夫の戸籍から抜けて、親の戸籍にもどるか、新しく自らの戸籍を作るかを選択することができます。日本は戸籍制度があるので、夫の戸籍から出る際にはどこかの戸籍に入る必要があるのです。
3. 離婚に伴う子供の氏や戸籍の変更
日本では、離婚する夫婦の9割方は、母親が親権を取得しています。母性優勢の原則ととして、特に子供が幼い間は、母親が親権をもったほうが細かいところに目が行き届くので子供の福祉にかなうだろうという事情によるようです。
一方、婚姻時や子供の出生時には、父親の苗字や戸籍が選択されることが多いので、子供は夫の氏を名乗り夫を筆頭者とする戸籍に入っていることが大半です。したがって、離婚時には、親権者である母親にあわせて子供の氏や戸籍を変更しなくてはいけない事態が生じることが多いです。
子供が父親の戸籍に入っている場合、母親が、離婚によって元の苗字にもどる場合でも婚姻時の苗字を使い続ける場合でも、子供の戸籍を父親を筆頭者とする母親の戸籍にうつすためには、裁判所に対して「子の氏の変更許可申立」を行い、その許可を得る必要があります。子の氏の変更許可申立ては、母親が婚姻時の苗字を名乗り続ける場合でも必要です。苗字は父母一緒だとしても、離婚後は戸籍が別になるので、父親の戸籍から母親の戸籍に移すことが必要になるというわけです。
この氏の変更許可申立ては裁判所に出廷すると当日に許可が下りることが多く、郵送請求でも2週間程度で認められることが一般的です。基本的には親権者である母の苗字とそろえる申立ては合理的ですので、ほぼ問題なく認められるのでご安心ください。
申立てに際しては、裁判所の所定の申立書フォーマットの他、子供の戸籍謄本と母の戸籍当方が必要となります。裁判所から許可がでれば、その許可書を、母親の本籍地又は住民票がある市役所等に持参して、戸籍を戸籍を映してもらう必要があります。
4.最後に
いかがでしたでしょうか。子供の戸籍や苗字をどうするかは、社会生活上少なからず影響を与える問題です。離婚後も同じ姓を名乗らせて子供の学校生活等になるべく影響を与えないようにしたいという考えもあるでしょうし、心機一転新しい苗字や戸籍を用意したいこともあるでしょう。それぞれの親子、夫婦にとって最適な選択ができることをお祈り申し上げます。