協議離婚と公正証書

日本では、離婚の際に当事者同士の話し合いで解決をする協議離婚という方法を選択する方が多いです。裁判や調停に比べると、費用や期間もかからないことが多いですし、第三者にプライバシーを知られることをためらわれる方もいるからでしょう。

ところで、協議離婚をする際は、必ず離婚条件を公正証書としておくことをおすすめします。

 

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1.公正証書ってなに?

公正証書とはいったいどういったものでしょうか?公正証書は、法務大臣に任命された公証人が作成する公文書です。公証人は、元裁判官や検察官等の有識者が任命されることが多いです。公正証書は、文書を作りたいと希望する人が、全国各地にある公正役場に出向き公証人の面前で文書を作成することで作成されます。公証人により確かに本人の意思に基づいて適正に作成されたことが証明されるので、文書に公の書類としての証明力や強制執行力が生まれます。

 

離婚の際に取り交わす離婚協議書には、重要な財産や身分の変動等が記されますので、事後的にトラブルを生まないように、公式な書面である公正証書にしておくことが望ましいのです。

 

 2.離婚条件を公正証書にしておくことのメリット

養育費の支払いや財産分与を分割払いにするときなどは、長期間にわたっての金銭債務の支払いになります。こうした長期の債務は、公正証書で手当てをしておかないと、離婚後途中で支払いがとどこおってしまうリスクがあります。例えば、離婚した日本の母子家庭では、離婚時に約束した養育費の支払いを子供の成人まできちんと受け取れているケースは、全体の約2割ともいわれています。

あってはなならないことですが、長い時間の経過とともに、支払い義務者である片方の親の経済状況の変化や再婚して別に扶養する子供ができた等の理由があるのでしょう。

 

公正証書にしておくと、内容に強制執行力があるため、このように途中で債務が支払われなくなったときに、強制的に債権回収をはかることができます。

公正証書にした条件については、支払が滞り、督促してもなお支払いがない際に、相手の給与の一部や口座などを差し押さえて、強制的にお金を回収することができます。

ちなみに公正証書がない場合でも、裁判を起こすことによって債権回収ができる可能性はありますが、訴訟は手間やコストがかかることとを考えると、万一に備えて、離婚時にあらかじめ公正証書にしておきすぐに強制執行がかけられるようにしておくことが望ましいのです。

 

3.強制執行とは?

強制執行力とは、相手が任意で支払い等をしないときに、法が介入して直接支払いをさせる力になります。調停や裁判離婚では、離婚条件は法的文書である調停調書や判決文の中に記載され、離婚条件が守られない場合は強制執行をかけることができます。

しかし、協議離婚の場合で作成される離婚契約書は、公正証書でなければ単なる私文書となるので、これだけでは強制執行をかけることができません。

 

4.公正証書作成のデメリット、注意点

公正証書作成は不払いリスクを回避するために非常に効率的な手段ですが、デメリットがあるとすれば、公証役場に支払う手数料と公証役場に行く手間がかかることでしょう。また、公正証書は法的拘束力は強いので、条件を吟味せずに作成してしまうと後悔するということもありえます。そのため、作成にあたっては、事前に内容をじっくり検討し、必要に応じて弁護士などの法律の専門家のサポートを借りましょう。

 

5.公正証書に定めておく条件

取り決めた離婚条件は、漏れなく具体的に記載しましょう。記載すべき代表的な事項は、子供の親権者の指定、養育費の金額や支払い条件、面会交流条件、財産分与、離婚慰謝料などとなります。

 

6.最後に

いかがでしたでしょうか。よく吟味された離婚条件を公正証書にしておくことは、あなたやお子さんの将来を守ることにつながります。協議離婚をされる際にはぜひ公正証書を作成し、納得のいく離婚ができるようにしましょう。