日本では夫婦が離婚すると、どちらか片方の親が親権者となり子供と一緒に暮らし、親権者とならなかったほうの親は子供とは離れて暮らすことになります。非監護親が子供とどの程度面会交流の機会をもつかはそれぞれの家庭によって異なり、親子の親密度愛もそれによって異なるでしょう。悲しいことですが、離婚によって非監護親が子供と疎遠となってしまうケースも少なくありません。こうした場合、非監護親が亡くなった場合の子供の相続権はどうなるのでしょうか?
1.離婚によっても子供の相続権は消滅しない
民法によって、配偶者と子供は、被相続人の第一義的な相続人として定められており、それぞれ1/2ずつの相続権を有しています。夫婦が離婚すると配偶者は被相続人と法律上赤の他人になりますので、相続権はなくなります。しかしながら、夫婦が離婚しても、夫婦の間に生まれた子供と両親との間の親子の関係は変化しません。したがって、子供は離婚後も両親に対して、1/2の相続権を有したままとなります。このことは、非監護親として別居して暮らしたとしても変わりません。そのため、離婚の有無にかかわらず、子供は親に対する民法上の相続権を有することになります。
2. 離婚した配偶者との子供に財産を渡したくない場合
上述のように、基本的には、子供は離婚した両親に対して、離婚していない場合と同様それぞれ法定相続権を持ちます。しかし、非監護親の立場からすると、いかに実の子とはいえ、離婚から年月がたち、ほぼ面会もせずに疎遠のまま子供が成長した場合、財産を相続させたくないという気持ちになることもあるでしょう。特に非監護親が再婚してより親密な関係の新しい配偶者や新しい配偶者との間の子供を持った場合に、そうした気持ちになってしまうこともあるでしょう。
こうした場合、非監護親がとりうる手段としては、遺書を遺しておき、相続財産をすべて再婚の配偶者やその間の子供に遺すという意思表示をすることができます。ただし、注意しておくべき事項として、民法上の相続権者は遺留分減殺請求権を有しています。遺留分減殺請求とは民法上定められた法定相続分を侵すような遺言がなされた場合であっても、法定相続分の一定割合まではその遺言を無効として自分に引き渡すように請求できる権利です。そのため、養育していない離婚した配偶者との間との子供に一切財産を渡さないということは、その子供から請求があれば不可能ということになります。遺留分減殺請求を主張できる期間は法律により定められていますので、相続を希望する子供側としては、非監護親が亡くなった後遅滞なく請求していくことが必要です。
3.監護親が再婚した場合
親権を持っている親が子供を連れて再婚した場合、子供の相続権はどうなるのでしょうか。再婚により子供が親の再婚相手と同居して、実の親子のように暮らしたとしても、それだけでは再婚相手と子供との間では相続権は発生しません。再婚相手と子供が養子縁組を行った場合に、2人の間に法律上の親子関係が発生するので、相続権が発生するのです。養子縁組には子供が幼い場合に、実の親との親子関係を消滅させたうえで、新たな養親との間の親子関係を成立させる特別養子縁組と、実の親との親子関係は存続させたうえで、養親との間の親子関係も成立させる一般養子縁組があります。特別養子縁組の場合は実の親との相続関係はなくなりますが、一般養子縁組の場合、子供は実の親からも相続でき、養親からも相続することができます。
4.最後に
いかがでしたでしょうか。離婚によっても、非監護親と子供との間の相続権は消滅しません。離婚後夫婦それぞれが再婚したり、新たに再婚相手との間に子供を授かったりした場合、相続関係は複雑になりがちです。離婚と子供の相続に迷いがある場合は、弁護士等の専門家に相談しましょう。