調停手続きにおける審判とは

日本での離婚の多くは当事者間の話し合いである協議離婚で決まりますが、話し合いがうまくいかないときは、調停を前置とした裁判手続きで行うことになります。

ところで、離婚調停の途中で調停が審判に切り替わることがあることをご存知でしょうか。審判離婚は全体の1%未満でありあまり利用されていないこともあるので、耳慣れない方もいらっしゃるかと思います。この記事では、審判離婚等についてご説明します。

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1.審判離婚とは?

 審判離婚は、家事事件手続法の第284条に定めがあります。離婚調停がはじまったものの、なかなか調停が成立しない場合において、家庭裁判所が相当と認めるときは、裁判所の職権で調停に代えて審判をすることができるというものです。

ご存知のとおり、調停は当事者間の合意であるのに対して、審判は家庭裁判所がその職権で判断を下すものです。

この点では裁判離婚と似ていますが、裁判手続きと比べると、調停手続きの中で実施されるので申立て手続きや費用の面で、当事者に負担が少ない方法といえます。また、調停と同様審判手続きは非公開になりますので、裁判と比べて当事者のプライバシーが守られるというメリットがあります。

審判離婚は、これまで利用されることが少なかったのですが、近年徐々に利用数が増えているようです。

 

2.審判となる具体的な事例

調停の中で審判に移行するのは、具体的にはどのようなケースなのでしょうか。

端的にいうと、当事者が離婚すること自体には合意しており、調停がまとまらない理由が比較的些細な問題である場合になります。

また、当事者の一方が、理由なく調停手続きの進行を引き延ばしていたり、出頭しなくなった場合もこれ以上当事者の話し合いに委ねても進行が望めないので審判となります。

せっかくこれまで時間をかけて調停を進めてきて、もうすぐ離婚が成立しそうであることにもかかわらず些細なことで不成立になってしまい改めて訴訟とするのでは、当事者の負担も大きく、訴訟経済上も非効率です。

そのため、こうした場合は、裁判所のイニシアチブで離婚を進めるという審判が選択されます。また、審判には即時抗告という異義申立て手続きが用意されているので、裁判所の職権で決めてしまったとしても、当事者に大きな不利益があるわけではありません。

また、審判は、離婚の有無そのもの以外にも、養育費の定め、慰謝料請求、面会交流の条件の決定でも使われます。

 

3.審判離婚の流れ

上述のように、離婚調停の申し立てや調停上の話し合いが一定程度進んだあと、ほぼ離婚について合意が得られたものの、調停成立が困難になるような事情が発生した場合、調停の担当裁判官が、審判とする旨判断をします。審判が終了し、どちらの当事者も内容に異存がない場合は、申立人は裁判所から審判確定証明申請書、審判書謄本、審判確定証明の交付を受けたうえで、市町村の役場に離婚届を提出します。

なお、当事者が、はじめから審判離婚を求めることも可能ですが、審判の有無は裁判所の職権になるので、裁判所が調停から開始したほうが適当と判断した場合は、調停からスタートするということになります。

 

4.審判結果に納得がいかない場合

調停で合意ができなかったわけですから、裁判所の決定内容にどちらかの当事者が納得いかないことももちろんあるでしょう。こうした場合は、審判に対する異議申し立て手続きである「即時抗告」をすることが可能です。 

異義申立が可能な期間としては、当事者が審判書謄本を受領してからから2週間以内となりますので、注意しましょう。 

当事者のどちらかが異義申立を行った場合、審判は失効、手続きは家庭裁判所から控訴審である高等裁判所にうつります。高等裁判所では、書面審理を行い審判内容を審理しますので、異義がある当事者は、審判の内容をくつがえすための証拠等を提出して出張を行うことになります。

 

5.最後に

いかがでしたでしょうか。審判離婚についてご参考になれば幸いです。