日本では離婚する夫婦の数が増えつつあり、3組に1組は離婚していると言われています。 一方、世界に目を向けると、どのような離婚事情になっているのでしょうか。
婚姻は各国の国内法による制度であり、その国の歴史や宗教観も影響するので、離婚のしやすさや制度、条件などは国によって違います。
この記事では、気になる海外の離婚事情や制度についてご説明します。
1. 宗教による各国の離婚制度の特徴
欧米諸国ではカトリックを国教としている国も多いですが、カトリックは生涯1人の伴侶と添い遂げることをよしとした教えでもあり、離婚については厳格な要件を求めている国も多いです。
例えば、カトリックの国フランスでは、正式な婚姻関係を結んだ夫婦が離婚する場合、日本での離婚に比べて様々な手続きが求められ、それほど簡単には離婚が認められません。
ただ、フランスには事実婚制度に該当するパックス制度があります。パックス制度は同性・異性カップルどちらもが利用可能な制度であり、結婚と同様のパートナー間の相続や税金待遇が認められています。そして、結婚と異なり、どちらかの意思表示のみで簡単に解消できるので、より手軽なパックス制度を利用する人も多いようです。
一方、イギリスは比較的離婚しやすく、婚姻後1年間は離婚できないという制限はあるものの、夫婦の半数が、結婚後10年以内に離婚しているようです。これには、歴史的、宗教的な背景もあります。エリザベス一世の父、ヘンリー八世は、新しい妃と結婚したいがためにエリザベス女王の母と離婚しようとしたところ、当時の国教であるカトリックのローマ法王から離婚が認められませんでした。そこで、ヘンリー8世はわざわざ離婚を許容する英国国教会という宗派をイギリスの国教とし、現在のイギリスでも国教として存続しています。 このような経緯から、他のヨーロッパの国に比べると離婚に抵抗がない国民も多いようです。
2. 配偶者の有責性をあまり問題としない国もある
日本の離婚は、有責主義を基調としているといわれています。民法で定められた法定離婚原因5つに該当しない限り、相手の同意なく離婚することはできません。また、法定離婚原因を作った側の配偶者は有責配偶者として、有責配偶者側から離婚を求める裁判をすることはできません。法定離婚原因の中の不貞行為等は民法上の不法行為にも該当しますので、慰謝料請求原因ともなります。
ところが、諸外国によっては、離婚にあたって配偶者の有責性を日本のようには評価しない国もあります。
たとえば、アメリカでは「無責離婚法」という法律があります。不倫や虐待など有責事由がなくても、どちらか一方が希望すればそれだけで離婚可能とする法律です。このような制度もあり、アメリカもイギリスと同様、世界的に見ても特に離婚率が高い国で、2組に1組のカップルが離婚しているといわれています。
この考え方は、有責主義に対して破綻主義ともいわれています。どちらかに有責事由がなくても、夫婦関係が既に破綻している(どちらかが結婚の継続を希望していない)のであれば、結婚を継続させる意味がないという考えの現れと言えます。
アメリカ人もカトリックを信仰する人が多く、離婚に抵抗がない人ばかりではありませんが、上記のような法律や婚姻自体を無効とする宣言をすることが認められているなど、比較的離婚をしやすい制度の国といえます。
また、カナダでは有責事由による慰謝料という考え方はないため、日本の様に不倫慰謝料等を請求することはできないようです。
3.最後に
いかがでしたでしょうか。日本の離婚事情とはまた一味違う、海外諸国の離婚事情についてご参考になれば幸いです。