離婚時に取り決めをしたはずの養育費を、きちんともらえている家庭は少ないのです。もちろん離婚はしてもお子様のために、ちんと支払いをしている人もいます。しかし、その数は日本の片親家庭のうち2割程度です。実際には、8割の家庭が養育費未払いの状況に苦しんでいます。
養育費はお子様の成長にとって、非常に重要なものです。今回は「養育費の未払い」の際にすべき手続きについてお話していきます。
1:養育費の支払い義務
養育費は、親権を持たない親が子どもの養育をする方の親に、必ず支払う義務があります。しかし、実際には最初だけ支払いはあっても徐々に支払いが滞り、しまいには音信不通になってしまうケースが非常に多いのです。
公正証書など、書面でしっかり取り決めをしたとしても、払い逃げをされてしまうパターンもあります。
2:養育費の取り立て方法
とくに相手側の借金問題などで離婚をした場合、「どうせ相手には支払い能力がないだろう」または「言っても払ってもらえないだろう」と養育費の未払いをそのまま諦めてしまう人が多いようです。
しかし、もう一度考えてみてください。養育費はご自身のために請求する金銭ではありません。お子様の健やかな成長のために必要なものです。その事実をしっかりと受け止めて、以下の手続きをしてください。
3:養育費未払いの場合の手続き
相手から養育費の支払いが滞ったり、未払いになってしまった場合は次の方法で手続きを進めていきます。
①内容証明で相手へ催促をする
まず最初にすることは、相手に養育費の催促をすることです。電話やメール、LINEでの催促をして、それで支払いをしてくれるようであれば問題ありませんが、その際も通話やメール、LINEでのやりとりを記録として残しておきましょう。(録音・メモ・スクショなど)
しかし、それでも支払いをしてくれる様子がなければ内容証明を使って書面で催促をします。内容証明は郵便局で手続きできます。相手に支払いの意思があればこの時点で支払いをしてくれるはずです。
②家庭裁判所で調停調書などを作成済みの場合
離婚時に家庭裁判所で養育費の取り決めなどをしている場合は、家庭裁判所に対しての以下の3つの申し出をすることができます。
「履行勧告」
履行勧告は無料で行うことができます。これにより、家庭裁判所から相手側へ勧告をしてもらうことができます。(しかし、これは強制ではなくあくまでも勧告です。相手が従わない場合は意味がありません)
「履行命令」
それでも支払いがされない場合は、正当な理由なく支払いを拒否する場合10万円以下の過料を請求する「履行命令」を申し出ることもできます。(ただし、これも強制的な養育費未払いの取り立てができる効力はありません)
「強制執行」
給与や銀行口座の差し押さえなどを強制的に執行できます。相手が支払いに応じなくても雇用先や、銀行から直接支払いをしてもらうこともできます。
どの方法を行うかは、相手や、離婚時の状況、現在の状況によって異なります。とくに強制執行をする場合は、できれば専門家の意見をもとに動くほうが良いでしょう。離婚問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
また、離婚時にお世話になった弁護士がいる場合は、引き続き相談してみるとスムーズです。
③公正証書を作成済みの場合
家庭裁判所などでの調停はしていないけれど、公正証書に離婚の際に養育の取り決めをして書面に残しているのであれば、公正証書を使って強制執行の手続きをすることができます。
公正証書に「債権者は,債務者に対し,この公正証書によって強制執行をすることができる。」という1文があれば、問題ありません。家庭裁判所の窓口で強制執行の手続きをしてもらうことができます。
④当事者同士の口約束や、個人的な書面での取り決めの場合
口約束や、自分達で作成した書面での取り決めだけでは、公的な証明にはなりません。ただし、この時点でも家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立てれば調停調書の作成をしてもらうことができます。
時間はかかりますが、②で紹介した「家庭裁判所で調停調書などを作成済みの場合」の方法で相手に養育費を取り立てることができます。
3:養育費を泣き寝入りする必要はありません
養育費はお子様のこれからの成長にむけて必ず必要な金銭です。トラブルを避けるために、泣き寝入りしてしまう人も多いですが、諦める必要はありません。日本の養育費未払いの現状を改善すべく、民事執行法改正も行われ元配偶者の銀行や勤務先、住所などを調べやすくなりました。
公正証書や、調停調書などを作成せずに離婚してしまった人も、この機会に養育費をきちんと請求することがきます。
場合によっては、弁護士などの専門家に相談をして、きちんと受け取るべきものを受け取ることができるように動いてみることも考えてみてはいかがでしょうか。