子供の親権は母親が有利だといわれています。
果たしてこれは本当の話でしょうか。
離婚の際に子供の親権を得たいと思っている父親にとっては「親権は母親が有利」「親権を父親が得ることは難しい」といわれてしまうと不安を覚えるかもしれません。
親権は必ず母親が得るわけではありません。
離婚時に父親が親権を得ることもあります。
今回からしばらく父親と子ども親権について見ていきます。
この記事では、父親が親権を得にくい理由を紹介したいと思います。
親権が欲しいと思っている父親がおさえておきたい子供の親権を決める方法や流れも合わせて説明します。
1:離婚時に子供の親権を父親が得にくい理由
一般的に離婚時の子供の親権は母親が有利で父親は得にくいといわれています。
もちろん父親が親権を得ることは不可能ではなく、父親が親権を得ているケースも実際にあります。
しかしながら、父親が親権を得にくいといわれていることには、それなりに理由があるのです。
まずは子供の親権について「父親は離婚時に親権を得にくい」といわれている理由について確認します。
父親が親権を得るための基礎知識として、親権を得にくいのはなぜなのかについて知っておきましょう。
父親が離婚時に親権を得にくい理由は4つあります。
その1:父親が親権を獲得しているのは10%に満たないというデータがある
父親が親権を得にくいことは司法統計を見ればわかります。
2017年の司法統計では、審判や調停の約2万件のうち、父親が親権を獲得したケースは10%に満たないという統計結果でした。
約2万件のうち父親が親権を獲得できたのは1,860件ほどになっており、9割は母親が親権を獲得しているという結果になっているのです。
司法統計の結果から、父親が親権を獲得しているケースが少ないことがわかります。
司法統計という実際のデータの裏付けから、父親が親権を獲得しにくいことがわかるのです。
その2:父親がフルタイムで働き母親が育児の中心を担っている家庭が多い
日本の養育でよくあるパターンとして、父親がフルタイムで働き母親が家庭や子育ての中心を担うケースがあります。
母親はパートや時短などで子供の保育園へのお迎え時間などに合わせて仕事をするのです。
父親が親権を得にくい理由のひとつとして、この日本のよくある家庭のパターンが挙げられます。
父親がフルタイムで働いていると、子供の時間に合わせることが難しくなります。
保育園などへお迎えに行こうとしても父親は仕事があるため迎えに行けません。
子供の生活リズムに合わせて仕事をすることも、フルタイムの勤務では難しいはずです。
そのため「子育ては難しいだろう」「今まで子供に合わせて生活していなかったのに、離婚したからといっていきなりできるわけがない」「子育て経験が乏しい」と判断されやすくなります。
母親は子供を中心に仕事や家庭のことをしているケースが多いため、必然的に母親の方が子育て経験や子供の生活リズムへの合わせやすさなどを考慮し、親権を得やすくなっているのです。
その3:裁判所が重視する先例には母親が親権を獲得しているケースが多い
裁判所は判例や先例などを重視する傾向にあります。
子供の親権の場合は裁判所が重視する先例に母親が親権を獲得しているケースが多いという事情があるのです。
司法統計などで母親が親権を獲得しているケースが多いという結果が出ている話はすでにしました。
母親が親権を獲得しているケースが多いわけですから、母親が離婚に際して子供の親権を獲得する先例が増えるのも当然ではないでしょうか。
母親が離婚のときに親権を獲得している先例を裁判所が重視して母親に親権を獲得させるため、父親は親権を得にくいという理由があるのです。
その4:子供が離婚後に母親と暮らすことを選択するケースが多い
子供の親権を決めるときは、ある程度の年齢の子供の場合は子供自身の意見をききます。
その際に子供が母親と暮らすことを選ぶケースが多いため、離婚のときに父親は親権を得にくくなっているのです。
日本では父親が仕事に専念し、母親は家庭や育児に専念するという家庭が少なくありません。
母親の方が子育てで中心的な役割を果たし子供と一緒にいる時間も長いことから、子供の方が「父親と母親が離婚するなら母親と暮らす」というケースも多いのです。
子供の意見は離婚時の親権決定のときに考慮されます。
そのため、子供の意見を重視する結果、父親は親権を得にくくなるのです。
2:親権は子供の幸せを考えて決められる
父親と母親が離婚するときは「親権は母親が得るべき」「このような基準に合致したら父親が親権を得るべき」といった明確な基準は存在しません。
子供の幸せを考えて父親と母親のどちらが親権を得るべきか決めるのです。
あくまで重要なのは子供の幸せで、両親の愛情や親権への意欲ではありません。
裁判でも子供の幸せを考えて親権が決められることになります。
たとえば、父親と母親がどちらも離婚時に子供の親権獲得を望んだとします。
このようなケースでは、子供が父親と母親のどちらに引き取られた方が幸せか、要するに子供の福祉につながるかを検討して決めるのです。
今まで母親が子供の養育に努め、保育園の迎えなども母親がおこなっていた。
子供が病気になったときも母親が看病し、母親の両親なども育児をサポートしていた。
対して父親も子供を愛していたが、フルタイムで仕事をしているので基本的な育児は母親に任せていた。
子供の看病や日常的な世話などはほぼしたことがない。
子供の福祉を考えれば、離婚後に父親と母親のどちらに育児を任せるべきでしょうか。
父親と母親それぞれ子供を愛していたとしても、子供の養育や福祉は愛情だけでははかれません。
このようなケースでは、子供の養育経験が豊富で子供の養育を優先かつ尊重できる母親が有利になると考えられます。
離婚時の子供の親権は子供に対する愛情のみではなく、現実的な子供の福祉や養育の点で判断されるのです。
離婚の原因を作ったかどうかは親権に関係ない
不貞行為などの離婚原因は子供とは関係のないことです。
子供の養育にとっても両親のどちらが離婚原因を作ったかは関係ありません。
離婚原因を母親が作ったからといって母親が親権を得られないわけではなく、父親が婚原因になったからといって父親が親権を獲得できないわけではないのです。
たとえば母親の不貞行為が原因で夫婦が離婚にいたりました。
離婚原因を作ったのは母親ですが、親権については母親が原因を作ったことや、不貞行為という事情は基本的にあまり関係ありません。
母親がそれまで育児に専念し、子供の養育経験が豊富で子供と過ごす時間が多かった、そして子供も離婚後に母親と暮らすことを希望しているなどのケースであれば、母親の不貞行為という離婚原因に関係なく母親が親権を得る可能性もあります。
なお、離婚原因が子供に関係がある場合は考慮されます。
たとえば離婚原因が暴力で子供にも被害が及んでいたなどの場合は、離婚原因が子供の親権を決める際に考慮されるのです。
ただ、基本的に親権は子供のためであり、離婚後の子供の福祉や養育のためのものですから、離婚原因を作ったかどうかや離婚原因については、子供の親権を決めるうえで別問題と考えた方が無難です。