よくあるご相談 離婚の手続きは大きく分けて3種類

一言に「離婚」といっても、離婚の手続きには3つの種類があります。
離婚の手続きの3つの種類とは「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」のことです。
離婚の基礎知識として、まずは離婚手続きの3つの種類について説明します。

 

離婚するときは基本的に協議離婚からはじまり、協議離婚での離婚が難しければ調停離婚、調停離婚が不成立に終わったら離婚裁判という流れで進めることになるのです。

 

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1:協議離婚

協議離婚とは夫婦の話し合いでおこなう離婚のことです。

離婚というとドラマなどから調停や裁判を用いるものという印象があるかもしれません。

 

離婚は夫婦で話し合って合意のうえで離婚届を提出すれば、あえて調停や裁判をする必要はないのです。
夫婦の「離婚しよう」「わかった」という話し合いだけで離婚するのが、この協議離婚になります。
離婚理由は問いません。夫婦が離婚に合意すればそれでいのです。

 

協議離婚では難しい手続きは必要ありません。
管轄の窓口などから離婚届をもらい、離婚に合意した夫婦が離婚届を記載して署名捺印、親権者の記載、成人した証人の署名捺印などの必要事項を記載して管轄の窓口に提出します。
離婚届が無事に受理されれば離婚は成立です。

 

協議離婚では離婚届に記載しなければならない事項以外を決めていなくても離婚が成立します。
離婚の際は養育費や財産分与、慰謝料といったお金の問題も絡みます。
しかしながら、協議離婚は財産分与といったお金のことを決めていなくても離婚届さえ受理されれば成立してしまうのです。

 

協議離婚は夫婦の話し合いと離婚届の記載と受理という手続きになっているため、費用も特にかかりません。
また、夫婦間の合意さえスムーズにできていれば、離婚しようと夫婦の合意が取れた日に即日離婚もできてしまいます。

 

3つの離婚手続きの中で最も簡便で迅速に離婚できるのが協議離婚の手続きなのです。
日本の離婚は9割がこの協議離婚になっています。

協議離婚は簡単に素早くできてしまいますが、トラブルの多い離婚手続きでもあります。
お話ししたように協議離婚は財産分与などを決めていなくても、離婚届を受理してもらえるのです。

 

そのため財産分与や養育費などを決めずに離婚してしまい、協議離婚で離婚した後から財産分与や養育費、慰謝料などが問題になるケースがあります。

 

協議離婚自体は財産分与などをしなくてもできますが、トラブル防止のためにも離婚前にしっかり話し合って決めておくことが重要です。
離婚前に財産分与や養育費、慰謝料、面会交流権などについて決めて、トラブル防止のために離婚協議書や離婚公正証書などにまとめておきましょう。

 

なお、協議離婚は夫婦の合意のうえで離婚届を提出するという離婚手続きなので、夫婦が離婚に合意しなければできません。
夫婦の片方が離婚に反対している場合や、離婚のときに財産分与や養育費などで諍いが起きていれば、協議離婚で離婚を進めることは難しくなります。
協議離婚できない場合は調停離婚で離婚手続きを進めることになるのです。

 

 

2:調停離婚

調停離婚とは裁判所の調停手続きを使った離婚のことです。

夫婦の双方が離婚に合意している場合は、あえて裁判所で調停離婚の手続きを取る必要はありません。

 

夫婦が離婚に合意しているのですから、協議離婚でスムーズに離婚できるはずです。
しかし離婚は夫婦が合意できるケースばかりではありません。
夫婦で離婚への意見が食い違っていれば協議離婚はできないのです。
また、中には離婚の際の財産分与などについて夫婦の意見が違っているケースもあります。

 

離婚自体は夫婦が合意していても、財産分与などの離婚条件で食い違ってしまい、離婚できないケースです。
このようなケースでは協議離婚ではなく調停離婚によって離婚を目指すことになります。
なお、調停離婚の際も離婚の理由は問われません。

 

調停とは裁判所手続きの中でも「夫婦の意思を尊重した話し合い」としての性質が強い手続きです。
裁判官に判決をもらうのではなく、調停委員という学識経験豊かな第三者が夫婦の間の離婚問題解決に向けてサポートします。
調停委員のサポートのうえで離婚するかどうかや、離婚条件などを決めるのが調停離婚です。

 

調停離婚は申し立てによってはじまります。
裁判所に調停離婚を申し立て、夫婦それぞれが離婚や離婚条件など、揉めている部分について自分の気持ちや意思などを調停委員に伝えるのです。
調停委員は夫婦それぞれの話を聞きます。この流れを平均6~10回ほど繰り返すことになるのです。

 

期間の平均としては4カ月程度になります。
調停の期日1回あたりの所要時間は2時間程度です。
ただし話し合うべき事柄や揉めている事が多い場合は、平均期間以上の時間を要する可能性もあります。
期間については夫婦の離婚の意見や意思などによってケースバイケースです。

 

離婚調停の間に離婚や離婚条件について夫婦間の合意が取れれば、調停離婚が成立します。
対して、夫婦の片方が強固に離婚に反対していたり、離婚条件の合意が取れなかったりすれば、離婚調停は不成立に終わるのです。
離婚調停が成立した場合は調停調書が作成され、不成立に終わった場合は次の裁判離婚の手続きを使うことになります。

 

離婚調停にかかる費用は弁護士に依頼するかどうかでかなり変わってきます。
弁護士に依頼しない場合の費用は収入印紙800円に切手代、戸籍などを取得する費用で数千円程度が目安です。
弁護士を雇う場合は調停離婚そのものの手続き費用に弁護士費用が加算されます。

 

調停離婚に必要な調停離婚の申し立て書などは、裁判所のホームページから取得可能です。
申し立て書の取得などについてはダウンロードして使えるため、特に費用はかかりません。

 

 

3:裁判離婚

裁判離婚とは、裁判によっておこなう離婚手続きのことです。

裁判所に裁判の申し立てをおこない、最終的に裁判官の判決で離婚の可否を決める手続きになります。

 

調停離婚と裁判離婚は同じ裁判所での手続きですが、調停離婚が夫婦の意思を尊重した話し合いの手続きであるのに対し、裁判離婚は夫婦の主張や証拠を出し合い最終的に裁判官が判断するという第三者に決断を委ねる手続きです。

 

協議離婚や調停離婚でも夫婦の離婚の話がまとまらなかった場合、すでに話し合いで決着をつけることは難しいと考えられます。
そのため、裁判離婚で第三者である裁判官に離婚の可否や離婚条件などを判断してもらうのです。

 

調停離婚や協議離婚はあくまで話し合いですから、夫婦の意思が重要でした。
離婚理由は特に問われません。
しかし裁判離婚の場合は違います。

裁判離婚では法律に定められた離婚事由に該当すれば離婚が認められる可能性が高くなり、離婚事由に該当しなければ離婚は認められにくくなるのです。

 

  • 不貞行為(不倫や浮気など)
  • 悪意の遺棄(生活費を渡さないなど経済的な嫌がらせなど)
  • 配偶者の3年以上の生死不明
  • 配偶者が精神病にかかり回復の見込みがない
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

 

裁判離婚では以上の法定離婚事由に該当するかどうかが重要になります。
離婚裁判の申し立ての後はお互いの主張や離婚事由に沿った証拠などを提出します。
たとえば不貞行為で離婚したい場合は不貞行為の証拠を提出し配偶者側と争うという流れです。

 

離婚裁判では必ず離婚が認められるわけではなく、離婚を認めない判決が出る可能性もある点に注意が必要です。
また、裁判の途中で裁判官が和解をすすめることがあります。


夫婦双方が和解案に同意すれば和解が成立するため、判決をもらう必要はありません。和解を提示されても必ず和解に同意する必要はなく、仮に和解に同意しない場合は通常の流れの通り判決をもらうかたちになります。


判決を受け取ったら2週間以内に控訴が可能です。
離婚裁判手続きの期間的な目安は1~2年ほどになります。

 

裁判離婚の費用は争う内容によって変わってくるのが基本です。
離婚のみを争うより、離婚に加えて財産分与や養育費、親権などを争う場合の方が費用の負担が重くなります。

 

弁護士に依頼するときも、離婚のみを争うのか、財産分与など他の事についても争うのかによって費用が変わってくるため注意が必要です。
気になる場合は離婚問題を得意とした弁護士に費用面について相談してみるといいでしょう。