父親と子供の親権〜(3)離婚時に子供の親権を父親が得るケース

母親が親権を得るケースが多く、日本の子育ては母親主体でおこなわれるケースも多いため、離婚時の親権は母親が得やすいといわれます。


しかし、父親が親権を得られないわけではありません。
すでにお話ししましたが、親権の決定で重視されるのは子供の幸せであり、離婚後の子供の福祉や養育です。


父親が親権を得ることが子供の幸せにつながると裁判所が判断すれば、父親が親権を得ることも可能になっています。

 

仮に子供の親権を父親が獲得できるとして、どのようなケースで父親が親権を得られる可能性が高いのかが問題です。
離婚時に父親が親権を得られる可能性が高いケースを具体的にご紹介します。

 

f:id:samuraigyou:20210629172041j:plain

 

1:子供に母親からの暴力や罵声などがあった

いわゆる母親が子供に暴力をふるったり、言葉で傷つけたりといった虐待があったケースです。

親権は子供のために決められますので、子供に暴力をふるったり、罵声をあびせたりする母親に親権が認められることはありません。
中には子供の命に関わるケースもあるため、子供の命や身体的な安全を考えて父親側に親権を認めるケースもあるのです。

 

子供に母親の虐待があった場合は、父親が口で「虐待があった」と主張しても第三者は簡単に信用しません。

 

裁判官などの第三者に認めてもらうためには虐待の証拠が必要になります。
虐待の音源や写真、子供の診断書などを準備して、母親が子供におこなっている虐待を立証する必要があるのです。

仮に立証に成功すれば、子供の命や幸せのために、裁判所などは父親に親権を獲得させる可能性が高くなります。

 

2:母親が子供の養育を放棄している

母親が子供の養育を放棄している。
つまり、ネグレクトの状態です。
ネグレクトとは「食事を与えない」「入浴させない」「子供の世話をしない」「学校に行かせない」など、子供の生活に必要な衣食住などを母親が放棄していることをいいます。


食事を与えないだけでなく、子供を学校に行かせず家の中に閉じ込めている状態などもネグレクトに該当するのです。

ネグレクトの状態が続くと子供の成育だけでなく、精神にも影響を及ぼす可能性があります。


母親が子供の養育をしていないわけですから、父親が適切な養育ができると証明できれば、その分だけ父親に親権が認められる可能性が高くなるのです。

 

3:父親が離婚前も子供の養育に関わっていた

父親の養育実績が認められれば、父親が親権を得られる可能性があります。
この場合の養育実績とは「お風呂に入れた」「子供の学校のお迎えを何度かしていた」くらいでは基本的に足りません。

 

また、「仕事で収入を得て家庭に入れていたから十分」というわけでもないのです。
子供を育てるときに父親が母親と同等の養育をおこなっていたケースが原則になります。

 

日本では父親が外で仕事をして母親が家庭を守りながら子育てするのがよくあるパターンです。

 

しかしながら、中には逆のパターンで生活している家庭もあります。
母親が外で仕事をして父親が家事や育児などをおこなうパターンです。
この他に夫婦共働きで、どちらかというと仕事に融通が利く父親の方が子供の学校行事や生活への関与を主にしているパターンなども該当します。

 

このようなケースでは父親の養育実績を考慮して、父親が親権を得る可能性も高くなるのです。
父親に半年以上の養育実績があることがひとつの目安とされています。

 

4:父親側に子供を育てる環境が整っている

父親側に子育ての環境が整っていることを証明できれば、父親が親権を得やすくなります。

 

たとえば、母親側には収入が乏しく、仕事もなかなか抜けられない。
子供が学校から帰宅しても、子供のことをみてくれる人もいない。
対して父親の方は比較的仕事時間を子供に合わせやすく、子供の帰宅に合わせて両親が子供の世話をしてくれる。

 

父親と両親の関係も良好であり、子供も祖父母を慕っている。
このようなケースでは、父親側の養育環境や父親の父母のサポートが認められて、親権の判断時に父親側が有利になる可能性があります。

 

ただし、父親の両親など子供の養育をサポートしてくれる人と子供の仲が思わしくない場合はこの限りではありません。

 

5:父親が子供との時間をしっかり取れる

離婚後は子供の同居するのは父親または母親です。
親権を得て子供と同居するのに、子供との時間が忙しくて取れないでは養育が難しいはずです。

 

離婚後は「子供の時間が取れない」と困っても、サポートしてくれる母親はいないのです。
父親が子供のために時間を作る必要があります。

 

特に日本は父親がフルタイムで働いているケースが多いわけですから、仕事をしながらでも子供との時間をしっかり取れることや、子供に時間を使えるということを証明することが重要です。

 

職場などに協力を得られるのであれば、協力を得られる旨をアピールする。
自分が時間を作るように工夫するのであれば、その旨や時間を取ることが実現可能なことを証明してアピールする。

 

父親が子供のために時間を作れることを証明できれば、その分だけ親権を得られる可能性が高くなるのです。

 

6:離婚後に子供が父親と暮らすことを希望している

子供がある程度の年齢(10歳くらいの年齢)だと、離婚の際に両親のどちらと暮らしたいか等の意見をきくことがあります。
子供の意見は親権を決めるときに尊重されるのです。

 

中には子供に「お父さんと暮らそう」と吹き込む人もいますが、裁判所は専門家である調査官などを派遣して子供の心情を探らせるため、かえって不利に働く可能性があります。

 

調査官は数多くの離婚ケースや子供たちを見ているプロです。
子供の意思の誘導があればすぐに見抜きます。

 

子供の中には両親に気をつかって自分の意見や気持ちを伝えられない子もいるため、子供の意見をきくだけでなく、様子を確認したり、心情を調査したりするのです。
子供の気持ちが本当に「父親と一緒に暮らしたい」というものであれば、裁判所側も子供の気持ちに配慮します。

 

7:離婚後に父親が親権を得ることで子供の負担が増大しない

父親が親権を得ることにより離婚後の子供の生活において子供のストレスや負担が増大しないかどうかも判断ポイントになります。
父親が親権を得ることで子供がストレスや負担なく暮らせるのであれば、裁判所は父親を親権者に定める判断をする可能性があるのです。

 

たとえば、父親は家族で住んでいた家に離婚後も住み続けるとします。
収入状況も変わらず、子供も学区の変更などはありません。
対して母親を親権者にした場合は遠方への転居が必要になり、学業や習い事などにも大きな変化があるとします。

 

子供は学業や習い事に熱心であり、学校には仲の良い友人が多数いました。
生活の変化をあまり望んでいない状況でした。
このようなケースでは子供の生活への変化やストレスなどを考慮し、父親が親権を得る可能性もあります。